将棋棋士 遠山雄亮のファニースペース

日本将棋連盟棋士 遠山雄亮のオフィシャルブログ

王位挑戦争いに表れた興味深い対決の構図

GWは天童→コンピュータ将棋選手権と連続で出張があり、その他諸々慌ただしく過ごしていました。その後は緩やか穏やかな日々で、生活を整える時間をとる余裕も作れています。

 

さて昨日は王位リーグ最終一斉対局を自宅で観戦していました。

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王位戦中継Blog

 

結果は、広瀬八段が紅組の優勝。白組は佐藤康九段-菅井六段戦のプレーオフに。その勝者が広瀬八段と挑戦権を争うことになりました。

佐藤九段は最終戦では千田五段との対戦で、関西若手棋士との連戦になります。

その佐藤九段と千田五段の対局が、先日コンピュータ将棋選手権で千田五段と話していた形の類似形となり、驚きました。

 

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部分的ですが、矢倉戦でこういう形から▲1三桂成△同銀▲2五歩と進めるのが最近コンピュータ同士の対局で流行っていると千田五段に聞いていました。まさにその展開に進んだのです。

結果的には佐藤九段にうまく切り返されてしまったようですが、昔からありながら軽視されている筋をコンピュータが新たに発掘し、再び日の目を見ました。

 

ちなみにこういった話をコンピュータ選手権では千田五段や阿部光五段と色々話したのですが、企業秘密的な要素もあるので多くは書けません。コンピュータの長所は新手筋だけではなく、昔からある筋を新しい発想の元に蘇らせることにもあります。今後も棋譜という形で色々と表れてくることでしょう。

 

さて千田五段を下した佐藤九段がプレーオフで対戦する菅井六段。電王戦で知名度も上がり、最近活躍目覚ましい若手棋士です。

その菅井六段が最近連採しているのが、飛先歩交換されるのを厭わない指し方。

 

 

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従前、こういった形から▲2四歩△同歩▲同飛と飛先歩交換が出来れば先手が作戦勝ちになるとしたもの。

しかしそのセオリーに疑問を呈している強豪が。それはコンピュータ将棋選手権で優勝したPonanza。電王戦で3戦全勝しており、知名度No.1のソフトでしょう。

このPonanzaは飛先歩交換は1手損だ、という主張の序盤戦が多く、その1手を中央にかけることで全局を制する指し回しを得意とします。

この発想は多くの将棋ソフトに共通しており、ソフト同士の対戦では(人間的に飛先歩交換を許すことに違和感があるため)首を傾げてしまいたくなる序盤戦が頻出します。

 

菅井六段はこの発想を取り入れ、稲葉七段(モバイル中継局)、横山六段(王位リーグ最終戦)と強敵を連破しました。

「コンピュータをうまく使いこなす人が上にいく時代がくるのは当然のこと」と公言する菅井六段ですから、この発想は間違いなくソフトから取り入れていることでしょう。

 

佐藤九段は関西若手棋士との連戦のみならず、ソフトの考えを多く取り入れた棋士との連戦という形にもなるのです。

挑戦への構図としては、「羽生世代の強豪」vs「コンピュータをうまく使いこなす若手棋士」のプレーオフで勝ったほうが「元王位でトップ棋士」広瀬八段と対戦することになりました。一体誰が勝ち抜くのか。

待ち受けるは羽生王位。挑戦者を決める道程、そして七番勝負と、ワクワクする勝負が続きます。

 

プレーオフの佐藤九段-菅井六段戦は5月29日(金)に、勝者と広瀬八段の挑戦者決定戦は6月8日(月)に行われます。勿論中継もありますので、お楽しみください。

 

 

それではまた